30周年記念誌(30th ANNIVERSARY)
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今年度30周年を迎えられ、お祝いを申し上げたいと思います。あと施工アンカーをこれまでの基準の観点で見ると、建築構造において耐震改修で広く使われております。構造以外においては、特定天井や昇降機、ガス給湯器等にも広く使われている状況です。あと施工アンカーが広く社会に普及・定着しているのも、本日お集まりの皆様方、先生方のこれまでのご尽力の賜物と、この場を借りて感謝申し上げたいと思います。これからのあと施工アンカーの利用の観点では、令和4年3月に告示の一部改正が行われ、構造部材に用いるあと施工アンカーの適用拡大が図られました。その際、上記告示改正にあわせて強度指定のための申請ガイドラインの公表が行われていますが、本日はそのガイドラインに示されている内容に関連してお話しさせて頂きます。まず強度の指定においては、そのプロセスとしてアンカー製品単体に関する性能評定、それからあと施工アンカーを用いた構造部材の構造性能評定を実施し、それらをクリアした後にあと施工アンカーの材料強度が指定される流れになります。すなわち、使われる構造物の規模や特徴をある程度勘案した上で、使用されるあと施工アンカーの強度が指定されることになります。先ほど申し上げたこのガイドラインに記載されている内容について特徴的なことが2つあり、1つは破壊モードが鉄筋コンクリートで認められているもの以外は認められないという点です。あと施工アンカーは一般的に定着材として用いられるため、その定着部分での破壊は認められてない点が1つ目の特徴です。2つ目の特徴は、長期の応力を負担するあと施工アンカーにおいて、十分な冗長性を確保することが求められています。本規定はこれまでの構造部材に対して明示されていたものはほとんどなかったものと思われますが、具体的に、あと施工アンカーに対して余裕のある強度を保有しているだけでは十分ではなく、例えば、あと施工アンカーが不測の事態で抜けてしまったとしても、支えている部材が脱落しないことを、別の抵抗機構で保証する規定です。このように、規定が高度化していますが、多くの知識と技能を持った方が、現場でそのことを実践していただくことが、これらの規定が現場で活用されるために重要な点と考えております。JCAAにおかれましては、そういった技能者の養成についても非常に熱心に取り組まれておりますので、今後もそういった人材の育成についておおいに期待されているところと考えています。最後に皆様のご健勝とご多幸をお祈りし、また当会の次なる30年の発展を祈念しまして、ご挨拶とさせていただきます。本日はおめでとうございました。安心・安全を30年~30周年記念誌~ |29国土交通省 国土技術政策総合研究所建築研究部評価システム研究室室長  向 井 智 久祝辞

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