30周年記念誌(30th ANNIVERSARY)
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一般社団法人日本建設あと施工アンカー協会が設立30周年を迎えられましたことを心からお喜び申し上げます。この30年間の関係者皆様方のご尽力に対しまして心から敬意と謝意を表する次第です。私事ですが、昨年度で大学を退職するまで約40年間、あと施工アンカーボルトの研究に携わってきました。いくつか思い出話をさせていただきます。あと施工アンカーボルトの研究を始めたのは、東工大の大学院修了後、宇都宮大学の助手に赴任した1985年からで、教授でおられた元建築研究所所長の上村克郎先生の研究テーマでした。引抜き耐力に及ぼすコンクリート母材の影響ということで、水セメント比、粗骨材量などを変えた試験体を作りましたが、経験された方は分かるでしょうが、ボルト一本につき埋め込み深さの3倍以上の支持有効面積が必要で、かなり大きな試験体となります。調合条件を数種に変えるので生コンとはいかず、研究室10名ほどの学生さんと一緒に朝早くから風呂桶のような大きさのコンクリートを1日4体、4日に分け合計16体ほど、ミキサーを使って何バッチもひたすら練りました。今思えば無謀な計画ですが、その後のコンクリートを研究する上での貴重な経験となりました。学生さんには今でも感謝しております。当時は亜鉛メッキのスリーブ打込み式アンカーが主流でしたが、スリーブの定着力の向上が課題でした。大学の近くの真岡市にある某メーカーの協力を得てスリーブを複数個打込み、締め付けるものなどを試作しましたが上手くいかず悩んでいたところ、たまたま三幸商事(現サンコーテクノ)の方が持ってきた平行拡張式アンカーが理想的で、素材も硬いS45Cかつトルク式の締め付けで大いに感心しました。今でも価格面の課題はあるでしょうが普及を願うものです。コンクリート工学会に破壊力学の委員会ができアンカーボルトを担当させていただきました。第一人者であったエリゲハウゼンらの耐力式が、破壊力学に基づいた式で難解でしたが、なんとか理解しようと勉強するうちに、コンクリートの破壊に関する研究が私のライフワークとなりました。その後も長期の耐久性、加熱の影響、衝撃荷重など、アンカーボルトの研究を継続してきました。今後とも、貴協会での活動が、あと施工アンカーボルトの品質および信頼性の向上に大いに貢献されることを期待いたします。貴協会が今後ますます発展されることを心より祈念致しまして、記念すべき設立30周年へのお祝いとさせていただきます。38| 安心・安全を30年~30周年記念誌~東京都立大学名誉教授  橘 高 義 典あと施工アンカーボルト研究40年

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