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安全管理

安全衛生

安全推進

建設現場で、あと施工アンカーを施工する場合に遭遇する場面で、作業者が守らなければならないこと、職長(安全衛生責任者)が守らなければならないこと、また建設現場によっては法規による規定のほかに自主規制(法規よりも厳しい規制)を設けている場合もあります。種々の規制などは、その裏返しに労働災害が起きている、ということです

保護具

保護具は作業の中で遭遇すると思われる危険から身を守るためのものです。装着の仕方等の使い方が正しくなければ万一の場合に役に立ちません。保護具ごとに装着の仕方、使用方法等に関する注意事項を列記します。

1.安全帽

使用上の注意。

  • 種類:
  • 帽体内部に衝撃吸収ライナー(発泡スチロール製のもの等)が取付けられた、飛来落下・墜落兼用保護帽の使用が望ましい。

  • 古いものは使わない:
  • 帽体は繊維で強化したプラスチックでできており丈夫なものです。しかし古くなったものはもろくなっている可能性があるので使用を避ける。また帽体に傷のあるものの使用も避ける。帽体の交換の目安は、毎日使ったとして3年程度です。

  • ヘッドバンド:
  • プラスチック製で、頭の後ろの部分で長さが調整できるようになっている。自分の頭の直径に合うように調整し、きちっと頭にはまるようにする。ゆるいと帽体がずれ、万一の場合に頭を保護する事が出来ません。

  • あご紐はしっかりとしめる:
  • しめておかないと、万一の場合に、帽体が飛んでしまい役に立ちません。

  • 傾いた被り方やアミダ被りはしない。

2.保護メガネ

コンクリートの粉じんから目を守るために保護メガネを使用します。最近の保護メガネは、通常のメガネの上からでも仕様が可能です。また後述する防じんマスクと併用しても内部が曇らないような工夫がされています。

3.防じんマスク

あと施工アンカーの穿孔作業は粉じん作業となり、除じん装置あるいは換気装置により作業環境を整備することが望ましい。しかし実際には作業場所が点在するために困難です。その場合には防じんマスクを使用する。使用するマスクは、国家検定合格品であることを確認する。

4.耳栓

エアーピック、ブレーカー作業など聴力機能に障害が出るような騒音のある場所では耳栓を使用する。その際、他からの警告音や連絡等が聞き取りにくくなるので注意しなければなりません。

5.墜落制止用器具(安全帯)

労働安全衛生法施行令が平成30年6月8日に改正され、この改正に伴い労働安全衛生規則等の一部も改正され、平成31年2月1日から施行または適用されています。

(1)改正の背景
今回の改正は、墜落制止器具としてフルハーネス型を使用している諸外国や国際標準化機構(ISO)の動向を踏まえたもので、高さが2メートル以上の箇所で作業を行う場合において、墜落により労働者に危険を及ぼすおそれがあるが、足場を組み立てる等の措置が困難な場合等に使用される安全帯について、安全性の向上とその適切な使用を図るためとされている。

(2)改正の概要

  1. 名称の変更
    「安全帯」が「墜落制止用器具」に名称変更された。(安衛令第13条)
    ただし、従来から使われている「安全帯」等の用語を使用することは差支えなし。
  2. 器具の種類を変更
    墜落制止用器具として認められるのは次の2種類
    ・胴ベルト型(一本つり)
    ・ハーネス型(一本つり)
    従来の胴ベルト型(U字つり)はワークポジショニング用器具であり墜落制止用器具には含まれない。
  3. 安全衛生特別教育の追加(安衛則第36条)
    「高さが2メートル以上の箇所であって作業床を設けることが困難なところにおいて、墜落制止用器具のうちフルハーネス型のものを用いて行う作業に係る業務(ロープ高所作業に係る業務を除く)」では特別教育の修了が必要。
  4. 墜落制止用器具の選定
    墜落による危険のおそれに応じた性能を有する墜落制止用器具(要求性能墜落制止用器具という)の選定要件は次の通り。
    要件1.
    6.75メートルを超える箇所ではフルハーネス型を使用
    高さが2メートル以上で作業床がない箇所や作業床の端、開口部等で囲い・手すり等の設置が困難な箇所の作業で使用する墜落制止用器具は原則としてフルハーネス型を使用する。ただし、フルハーネス型の着用者が地面に到達するおそれのある高さが6.75m以下の作業では胴ベルト型(一本つり)を使用できる。(ガイドラインでは、建設作業等での胴ベルト型の一般的な使用条件の目安高さは5m以下となっている)
    要件2.
    使用可能な最大荷重に耐える器具を選定
    要件3.
    ショックアブソーバーはフック位置により適切な種別を選定

(3)安全帯の規格の全部改正と現在の安全帯の使用可能期間
「安全帯の規格」が「墜落制止用器具の規格」に改められ、平成31年2月1日から適用されている。従来の安全帯が使用できる猶予期間は、2022年1月1日まで。

(4)ガイドラインの公表
平成30年6月22日付で、墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドラインが公表されている。(基発0622第2号)

6.安全靴

靴底の厚い安全靴を使用することが望ましい。コンクリートの破片が飛ぶような作業環境では編み上げタイプの安全靴を使用し、作業ズボンの裾をきちんと巻き込むのがよい。足場上の作業が多い場合には、昇り降りのし易い安全地下足袋(セーフティタビ)を用いる。いずれの場合も「つまずき」、あるいは「はさまれ」などに備え、爪先部分に軽合金製あるいは樹脂製の先芯の入ったものとします。

7.その他

振動工具を使用する場合には、防振手袋を使用します。また夜間に交通のある場所で作業する場合には反射チョッキを使用します。

以上、安全帽(保護帽)の着用は、安衛則539条(保護帽の着用)で、「事業者は...労働者に保護帽を着用させなければならない(前条第1項)」と定められていると同時に「・・・労働者は・・・保護帽を着用しなければならない(同第2項)」という義務規定も定められています。同じように墜落制止用器具(安全帯)についても、事業者に対する義務(安衛則519条)と同時に、「労働者は・・・要求性能墜落制止用器具等の使用を命じられたときは、これを使用しなければならない(安衛則520条)と定められています。

※上記文章は2019年「あと施工アンカー技術講習テキスト」より抜粋。