一般社団法人日本建設あと施工アンカー協会が、設立30周年の節目の年を迎えられましたことに、心よりお祝い申し上げます。また、本年8月21日には一橋講堂において技術講演会が開催され、助成研究の成果発表や特別講演などの情報の発信、次世代研究者の発掘等の意義深い取り組みが行われましたことにも、敬意を表します。建築の分野では、昨年の告示(平成13年国土交通省告示第1024号)改正により、あと施工アンカーの適用対象から耐震補強の限定がなくなり、より広く様々な場面での活用が見込まれることとなりました。同時に、あと施工アンカーの品質確保や材料の強度、構造設計の方法などの妥当性を第三者が評価する制度も構築され、これによって、「高い技術力を有する方々が、その技術を適切に社会に適用することで世の中のさまざまな期待に応えていく」ための制度が実現しました。今後、さらなる技術や社会の発展へと繋がっていくことに期待したいと思います。なお、上記制度の実現に当たっては、貴協会をはじめ関係する方々が“密接に連携”し、将来を見据えて議論を重ね、社会実装に向けた取り組みを精力的に行って戴きました。改めて、お礼申し上げます。最近読んだある本によりますと、言葉によるコミュニケーションは、我々が行う全コミュニケーションの情報量のうち僅か2割程度しかないそうです。人はミラーニューロンという運動神経細胞の働きにより、相手の表情や仕草、その場の雰囲気等の膨大な情報を繊細に感じ取り、その相手に自分を置き換えることでその人の気持ちや考えを理解しようとするそうです。これは相対して交わることの有効性や必要性を示していると思われます。つまり、リモート会議では得られない何かがそこにあり、同じ空間に交わることで相互理解は確実に深まるということです。こう考えますと、私たちが経験したコロナ感染症による交流制限は、私たちの相互理解を著しく低減させた可能性がありそうです。今一度、上記で述べた“密接な連携”をしっかりと取り戻す必要があると思われます。そこでは、みんなの想いが絡み合い、ともに創り上げる“あるべき姿”が得られるはずです。そして、組織の枠を超えた信頼の世界が拡がり、さらなる発想や活動の高度化、活性化を促すことになると期待されます。皆さんと、あと施工アンカー技術に期待される将来像を共に目指して参りたいと思います。結びに、「日本建設あと施工アンカー協会」がますます発展され、国民生活の安全・安心に大いに貢献されますことと、関係する皆様方のご多幸を心より祈念いたします。34| 安心・安全を30年~30周年記念誌~国立研究開発法人 建築研究所理事 福 山 洋“密接な連携”が創り上げる“あるべき姿”
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